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AIという技術

捲土重来(けんどちょうらい)ということばがある。戦いに敗れ、一旦戦場から退いた軍勢が、ふたたび土けむりを上げて進撃して来るさまをいう。戦いというものは一度だけでは決着しないことが多い。また、ヘーゲルは物事が発展して行くさまをアウフヘーベン(止揚)という言葉で表現した。上から見ると堂々めぐりをしているだけのようにも見える螺旋階段は、横から見るとジグザグながら着実に登っていくことが分かる。ものごとは、なかなか真っ直ぐには進まないものである。

AIという技術は、捲土重来を繰り返しながら螺旋階段を登っているような技術である。1960年代のパーセプトロンというアルゴリズムに端を発した第一次ニューロブーム(パーセプトロンで指摘された問題をクリアした)バックプロパゲーションで再び脚光を浴びた1980年代の第二次ニューロブーム、そして実社会での利用を目指したエキスパートシステム、1990年代に多くの家電に埋め込まれたファジー … と、何度も何度も衆目を集めたが、残念ながら同時にその都度期待を裏切ってきた。それは世間がSF小説や映画、テレビドラマなどで培い、過剰に膨らませてきた空想のせいもあっただろう。

しかし、今回の第三次ニューロブームといわれるAIの復権は、本物ではないかと言われている。今回、AIが復活するにあたって引っ下げてきたのは「ディープラーニング」という技術である。インターネットやIoTが流し込んだ海のようなビッグデータを餌にして、コンピュータが学習(機械学習)をし始めたのである。機械学習とは、ピックアップされた難問をじっくり解くのではなく、市販の練習問題集を手当たり次第にこなすようなやり方である。

もともとコンピュータは、計算速度と記憶力ではとうの昔に人間を凌駕している。小数点以下8000兆桁目の計算を達成したかと思えば、今年1月には約2233万桁の素数が発見されたと報道があった。コンピュータが(ディスク・クラッシュは別として)何かを忘れたというようなことは聞いたことがない。乱暴な言い方を許してもらうと、人間がコンピュータに負けない知的能力は、残すところあと思考力だけになってしまったのではないか。それがいま危うくなりつつある。

発見や問題解決に活かす思考方法としては大きく帰納法、演繹法、仮説法とがあるが、データ量がモノをいう帰納的な思考方法では、そろそろコンピュータに席を譲らなければならない。ひとりの人間が何かデータを集めようと思えば、書籍であれば一生かけても2万冊、テレビなら10万時間が限界であろう。これに対してコンピュータは、人間とは桁違いの処理スピードと記憶容量と広大なネットワークを備えており、それらを武器に延々とデータを集め、延々と学習し続けることができる。コンピュータは疲れを知らないし、睡眠をとらない。怠けないし、ミスをしないし、仕事を選ばない。それこそ不眠不休で勉強をし続けるのである。それに文句も言わない。

量は時に質を凌駕する。下手な質を求めるより、むしろ量こそが高い質を生み出すのである。コンピュータが圧倒的なスピードで莫大な量を学習するディープラーニングをして、一旦コツをつかめば瞬く間に人間を凌駕するであろうことは自明である。そう遠くない未来で、コンピュータは知性を持ち、コンピュータ自身でプログラムが改良できるようになると予測される。そうなると、ディープラーニングを繰り返すコンピュータは収穫加速の法則に基づき、人類の知能を超えた『超知性』を持つといわれている。

2045年、AIは人類を滅ぼす― 昨年、センセーショナルに出版された『人工知能~人類最悪にして最後の発明』ジェイムズ・パラット(著)では、人工知能が進化した一般人工知能(AGI:Artificial General Intelligence)ができると、人間の100倍から1000倍の知性を持つ人工超知能(ASI:Artificial Super Intelligence)を生み出すまでにそう時間はかからないだろう、という予測を立てている。また、この人工超知能はやがて『超知能』を手に入れると、人類の生存そのものよりもASIの持つ興味・欲望の充足が最優先され、結果、人類は滅亡するであろうとも記している。

現時点ではとてもSFチックでいつかの映画で見たような荒唐無稽な話に聞こえるが、ここ数十年のテクロジーの進化は想像を絶するものがあり、決して絵空事ではないと感じる。そのため、一度暴走してしまうと人類では制御不能となり、(賛否両論あるが)原子力エネルギーの二の舞になるのではないか、といった不安すら覚える。知らぬ間に・・・といったことにならぬよう、我々は常に新しいテクノロジーに関心を持ち続け、誤った方向に進みそうならば、声を上げることでコントロールしなければならないと強く感じる。

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