生産管理システム選びの第一歩 2024.03.25
製造業において「生産管理」とは、製品を効率的に生産するために必要不可欠な仕組みです。
生産管理の最大の目的は、製品の「品質(Quality)」「コスト(Cost)」「納期(Delivery)」を最適化することです。これらQCDのバランスを維持し、それぞれを向上させることで顧客満足度を図り、利益を最大化することを最終的な目標としています。
ただ、生産管理の範囲は非常に多岐にわたります。具体的には、製品の生産計画や材料の在庫把握、調達品の管理や部署への手配、工程の進捗状況の把握や原価管理などを指しますが、それぞれの業務ごとに品目や受注単位で管理する必要があり、これを一から手作業で行うと非常に手間が掛かります。また、それぞれの業務を個人に任せてしまうと属人化し、業務の引継ぎに支障をきたすことでしょう。そのために生産管理システムがあります。
目次
Ⅰ .生産管理システムとは
Ⅱ.生産管理システムの選び方
1.生産形態と合致しているか
2.機能範囲が網羅されているか
3.機能の拡張性は担保されているか
4.業種・会社規模と合致しているか
まとめ
Ⅰ.生産管理システムとは
生産管理システムとは、モノづくりの現場において、生産計画・在庫・工程の進捗・品質・原価といった情報を管理し、効率化や最適化に繋げるためのシステムのことを指します。「どの材料」を「いくつ使って」「いくつ生産」し、「いくらで販売した」か、厳格に管理することで、製品のQCDをバランスよく高めることができ、手作業での集計やExcel等への入力作業の効率化を図ることができます。
生産管理システムと似たものとして、ERP(Enterprise Resource Planning)が挙げられます。「企業資源計画」とも訳されるERPは、生産管理・財務・人事・調達といった企業全体の業務プロセスに係るデータを一元管理するシステムを指します。生産管理システムとは違い、企業経営そのものの最適化や合理化を目的としています。ERPにも生産管理システムが組み込まれている場合がありますが、業界特有の製造形態への対応にはカスタマイズが必要となり、結果的に導入費用が増大する場合があります。そのため、生産の効率化を目的にシステムを選定している場合には、ERPでは不十分と言えるでしょう。
現在、生産管理システムと一口に言っても、価格帯等で様々なシステムがあります。ただ、システムの選定から導入までは1年から1年半かかるプロジェクトとなり、コストも手間も非常にかかることから、生産管理システムの選び方が重要となります。
生産管理システム選びに失敗しないために、生産管理システムの選び方についてご紹介いたします。
Ⅱ.生産管理システムの選び方
1.生産形態と合致しているか
すべての生産管理システムがあらゆる製造業の生産形態に合致しているとは限りません。 製造業における生産形態は様々であり、生産時期や生産方式などによって、以下の図の通りに分類されます。
製造業の生産形態には様々な種類があり、場合によっては複数の生産形態が混在している企業も存在します。
生産管理には大きく分けて、「MRP(繰り返し生産)」「製番管理(個別受注生産)」の2つの方式が存在し、それぞれの生産形態に相性の良い生産管理システムが存在しています。
合致しやすい生産形態:見込み生産、連続生産、少品種大量生産など
合致しやすい生産形態:受注生産、個別生産、多品種少量生産など
生産管理方式には上記のほか、自動車関連の製造業に多く見られる「かんばん方式」などもあります。
自社がどの生産形態なのかを把握し、その生産形態に合致した生産管理システムを選定する必要があります。
2.機能範囲が網羅されているか
生産管理システムと一口に言っても様々な機能があり、価格帯等によってその機能範囲は異なります。生産管理システムを選定する際には、自社の課題をしっかりと把握した上で必要な機能範囲を網羅しているかを確認することが大切です。ここでは一般的な生産管理システムが持つ機能についてご紹介いたします。
①生産管理
・計画管理
工場が「いつ」「何を」「どれだけ」生産するのかを計画する機能です。システムで計画管理を行うことで、過去のデータから需要予測を立てたり、現時点の受注状況と在庫状況を確認しつつ、効率的な生産計画を立てたりすることが可能です。
・手配管理
製品を製造する上で必要な手配情報を作成するために必要な機能です。手配管理には、生産管理方式によって2つの機能が存在します。
《所要量計算》
所要量計算とは、MRP方式をとるシステムの手配管理機能です。生産計画で作成したオーダーや登録した受注情報を基に、部材の発注数や支給数、作業工程の手配先や着手日・完了日などを自動で計算し、手配情報を作成します。複数のオーダーをまとめて手配することでき、手配作業の効率化が期待できます。
《製番管理》
製番管理とは、製番方式をとるシステムの手配管理機能です。受注を管理する番号(製番)に紐づけて部材の発注数や作業工程などを登録し、手配情報を作成します。製番単位で手配情報を作成するため、部材や作業工程の変更などにも容易に対応しやすく、確定した手配情報から五月雨式に手配を行うことができるため、柔軟な運用が可能です。
・工程管理
工程管理とは、現場の負荷状況に合わせた人員の配置やスケジュールの調整を行い、納期遅れや品質低下を防ぎ、生産性の向上へと繋げる機能です。現場の負荷状況をリアルタイムで把握でき、急な注文や材料の納品遅れ等のスケジュール変更にも対応することが可能となります。
・進捗管理
進捗管理とは、製造工程や注文品の納入が期日までに着手又は完了しているかを確認することができる機能です。現場に確認せずともリアルタイムでの現場進捗を把握できることや、納期遅れによる後工程の影響を早急に把握することが可能となります。
・在庫管理
在庫管理とは、製品や部品、材料の入庫や出庫の情報を可視化することで、欠品や過剰在庫を事前に防ぐことができる機能です。在庫状況をリアルタイムに把握することができ、過去のデータを集計することで最適な適正在庫数を設定したり、IoT機器やハンディーターミナルなどを用いて棚卸作業などの効率化やヒューマンエラーを防止したりすることも可能です。
・原価管理
製品や受注にかかる原価を科目ごとに集計し、業務改善に必要な情報を取得して、現在のムリ・ムダ・ムラを見える化させる機能です。正確で効率的な原価集計が可能となるほか、予算(標準原価)と実際原価の対比を容易に確認することができるため、原価低減へと繋げることが可能です。
以上が生産管理システムにおける主な機能ですが、製品のQCDを最適化し、企業の利益を向上させるためには、「販売管理」の部分も適切に管理する必要があります。生産管理システムでは、販売管理の機能を有しているシステムも多く、将来的なシステムの拡張性という視点からも生産管理システムの選定時には重視すべきポイントといえるでしょう。
②販売管理
・受注管理
得意先からの注文情報を受注情報として登録し、管理する機能です。受注情報に紐づけて仕様書などのドキュメントファイルを添付することが出来る場合もあります。受注登録時のヒューマンエラーの防止、業務の効率化が期待でき、受注データを集計することで需要予測や販売戦略の策定に繋げることが可能です。
・出荷管理
得意先からの受注に対して、出荷や納品が正しく行われているかを管理する機能です。荷姿単位に応じて納品書や受領書、現品票などの必要書類を出力します。また、リアルタイムで在庫数に反映され、製品の出荷履歴の追跡、出荷後のメンテナンス管理及びトレーサビリティの管理なども可能となります。
・売掛管理
得意先ごとの売掛金の管理や支払方法の管理、請求書の発行や入金後の消込など、取引先への債権の管理を行う機能です。
・買掛管理
仕入先や外注先への買掛金を管理し、取引先への支払通知書の発行や支払期日・金額を管理するための機能です。支払漏れ防止による信用リスクの低減や、支払予定金額の把握による健全な資金繰りに繋げることが可能です。
3.機能の拡張は可能か
生産管理システムを日々運用していく中で、業務内容の変化や法制度に対応するために、新しい機能の追加やカスタマイズが必要となる場合があります。また、会計システムやSFA、IoT機器などといった他システムを導入・入替した際には、そのシステムとの連携を検討する必要があるかもしれません。生産管理システムは導入にコストや時間が掛かり、数年単位で頻繁に入れ替えるものではないため、カスタマイズの可否や連携方法等、生産管理システムそのものの拡張性が重要となります。そのため、現状の課題のみならず、将来的な業務の変化も見越した上で生産管理システムの選定を行う必要があるでしょう。
4.業種・会社規模との合致
製造業といっても、家電などの組立を中心とした製造や、金属や鉄鋼などの加工を中心とした製造、あるいは医薬品等の配合を中心とした製造など、業種によって様々な製造方法が存在します。生産管理システムにおいても得意・不得意とする業種が存在しており、自社の業種に合致する生産管理システムを選定する必要があります。また、それぞれの生産管理システムがターゲットとする会社規模についても注意が必要です。もちろん高価格帯であればあるほど機能は充実していますが、その分操作も複雑となり、現場作業者の負担が増加してしまうことになります。
まとめ
ここまで生産管理システムの選び方についてご説明いたしました。
企業の利益向上のためは適切な生産管理を行い、QCDを向上させることが大切ですが、 生産管理システムの導入には時間やコストがかかるため、慎重に選ぶ必要があります。本稿の生産管理システムの選び方をぜひ参考にしていただき、貴社の利益向上へと繋げることができれば幸いです。
弊社では、創業以来約30年間にわたり、生産管理システムの「Factory‐ONE 電脳工場」をご提供しております。Factory‐ONE 電脳工場は見込み生産・繰返し生産・一品個別生産などの生産形態に対応した生産管理システムです。現在、Factory-ONE 電脳工場は、業種業態問わず国内2000本を超える導入実績があり、中堅・中小の製造業様を中心に幅広く導入いただいております。