基幹システム導入検討時の
オンプレミス・クラウドの環境比較
 2024.07.30


 近年、オンプレミス環境ではなくクラウド環境で基幹システムを運用する企業が増えています。しかしながら、実際に自社の運用環境を検討する際、オンプレミス環境とクラウド環境のどちらが自社に合っているのか判断する事は容易ではありません。
 本稿ではオンプレミス環境とクラウド環境のメリット・デメリットを解説していきます。基幹システムの運用環境を検討する際の一助になれば幸いです。

 

Ⅰ.「オンプレミス」「クラウド」とは

 オンプレミス(on-premises)とは「構内」や「店内」という意味があり、自社内にサーバー機器を”モノ”として保有し運用する形態を指します。クラウド環境が登場する以前は一般的なシステム構築方法でした。一方のクラウド(Cloud)とは、サーバー機器を自社で保有せずクラウドベンダーやシステムベンダーが提供するサーバー環境を”サービス”として契約し運用する形態を指します。クラウド環境は新しく登場した仕組みではありますが、必ずしもオンプレミス環境よりクラウド環境が良いかと言われるとそうではありません。オンプレミス環境とクラウド環境にはそれぞれメリット・デメリットが存在します。
 今回は基幹システムを運用する際の機能面・費用面・セキュリティ・DR面の3つの観点からオンプレミス環境とクラウド環境を比較していきます。

Ⅱ.機能面からみるメリット・デメリット

 オンプレミス環境の機能面におけるメリットとして、ネットワークパフォーマンスがあります。 オンプレミス環境は社内ネットワークの中でのみ利用されるため、外部ネットワークの影響を受けることがありません。そのため、外部ネットワークを利用する必要があるクラウド環境に比べて安定した通信が実現できます。

 クラウド環境の機能面におけるメリットは拡張性の高さが挙げられます。 オンプレミス環境はサーバーのスペックを見直したい際に、そもそも変更が出来ない場合や、見直しのために新たに機器を購入することになりますが、見積から調達、設置作業のプロセスを経るため、増設完了に多くの時間を要する場合があります。 クラウド環境ではサーバースペックの見直しは容易かつ短期間で実現する事が可能です。 これは新たにサーバーやインフラを調達するのではなく、契約しているサービスの構成の見直しを行うだけで構成を変更することができるためです。また、クラウド環境であればスペックダウンも容易に行えます。例えば基幹システムの稼働が増える繁忙期にはメモリ等のスペックを増設し、それ以外の期間はスペックを抑えるなど、自社の業務形態に合った自由度の高いシステム構築が実現できます。

Ⅲ.費用面からみるメリット・デメリット

 費用面はオンプレミス環境とクラウド環境で大きな違いがあります。
 オンプレミス環境の場合、初期の導入コスト(イニシャルコスト)が大きいことが特徴です。これはサーバーなどを自社で保有することになるためです。しかし、オンプレミス環境の場合は購入をしてしまえば運用コスト(ランニングコスト)を抑えられるメリットがあります。

 一方のクラウド環境は自社保有の資産ではないため購入の必要が無くイニシャル費用がほとんどかからない事が特徴です。(一部クラウド環境の構築・設定作業等のイニシャルコストが発生する場合があります。)ただ、クラウド環境はサービス利用料として運用コスト(ランニングコスト)が発生します。また、費用面を比較する際の注意点としてオンプレミス環境の“見えないコスト”を考慮する必要があります。見えないコストとは、自社で保有しているオンプレミスサーバーに掛かる日々のメンテナンスを指しています。例えば人件費や電気代、設置場所の維持費などの費用に合わせて計上されてしまい、サーバー維持費として集計しづらいコストが発生している点も注意しなければなりません。

Ⅳ.セキュリティ・DR面からみるメリット・デメリット

 オンプレミス環境は高いセキュリティを保つことが可能です。これは前述の通り、社内ネットワーク内で通信が完結し、外部からのアクセスを遮断することができるためです。一方のクラウド環境ですが、こちらはインターネット回線を通るため適切なセキュリティ設定がされていない場合、外部からアクセスされる危険性が出てきます。そのため、IP制限IP制限やVPN接続など、クラウド接続であってもアクセスできるユーザーを制限するように環境を構築することでセキュリティを担保するような対策が可能です。

 また、オンプレミス環境とクラウド環境を比較する上でDR(ディザスタリカバリ)対策も考慮する必要があります。特に日本では地震や台風などの自然災害が毎年発生しており、被害を受ける危険性が十分に考えられます。オンプレミス環境でサーバー障害などの被害を受けた場合、環境の回復ができない、もしくは回復までに時間がかかる可能性があります。しかし、クラウド環境であれば、データが自社から遠隔に存在するため自然災害の影響を受けづらく、仮に被害を受けた場合でも早期の環境回復が期待できます。

Ⅴ.まとめ

 オンプレミス環境とクラウド環境のそれぞれの特徴をまとめると、以下の通りです。

オンプレミス環境・クラウド環境の特徴
 オンプレミス環境クラウド環境
機能面 外部ネットワークの影響を受けない安定した通信が可能。 サーバースペックの見直しが容易に行える。
費用面 イニシャルコスト:大
ランニングコスト:小
イニシャルコスト:小
ランニングコスト:大
セキュリティ・DR 社内のネットワークのみで完結するため、高いセキュリティを確保できる。ただし、適切にバックアップを取っていないと災害発生時に復旧が困難になる可能性がある。 外部ネットワークを経由するため環境構築時に適切なセキュリティ設定を行う必要がある。バックアップ等はサービスの一部として組み込まれていることが多いため災害発生時も早期復旧が期待できる。


 ここまでで紹介をしたようにオンプレミス環境であれば、クラウド環境であれば問題ない。といった絶対的な正解はありません。
 オンプレミス環境・クラウド環境それぞれにメリット・デメリットがあるように、自社が重要視するべきポイントはどこかを正しく理解し、自社に合った環境の選定が大切です。基幹システムを導入する際にはどういったシステムを導入するかに加え、どこにシステムを構築するかという点も非常に重要になってきます。


 弊社では生産管理システム「Factory‐ONE 電脳工場」のパッケージメーカーとして長年に渡り、基幹システムの提案・導入の実績がございます。近年ではオンプレミス環境だけでなく、クラウド環境でご利用を頂くケースも増えており、弊社では「OCI (Oracle Cloud Infrastructure)」をご提案しております。製造業様の基幹システム導入・刷新に関するお問い合わせはお気軽にお申し付けください。

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