ホントに在庫 ”見えて” いますか? 2024.06.20


 在庫管理は企業にとって非常に重要ですが、効率化や見える化について課題を抱えている企業も少なくありません。今回は「適正な在庫を保つためにどのように管理していけばいいのか、最終的に見える化へと繋げるためにはどのようなツールが効果的なのか」という点について、在庫管理の基本も含めてご紹介します。

 

Ⅰ.在庫管理とは

 製造業だけでなく、企業経営をする上で在庫管理はとても重要な要素となります。企業の売上に直結し、資金繰りやキャッシュフローに大きく影響します。重要な要素ではありますが、在庫管理とはどういった事を指すのか、具体的に何をしなければいけないのか、ハッキリと答えられない方もいらっしゃるかと思います。
 在庫管理の基本的な考え方をおさらいすると、一般的には「自社で保管している在庫の数量や場所を管理・維持すること」と言われています。もう少し具体的に製造業の業務に落とし込んで考えてみましょう。

 製造業における在庫管理の対象となる「在庫」が指す内容は、原材料・部品・仕掛品・完成品といった製造プロセスで取り扱うモノすべてが該当します。では、製造業における最適な在庫管理とは、「在庫」に該当するすべてのモノを欠品しないように持ち続ければいいということなのでしょうか。
 例えば、今後の生産に備えて原材料や部品の在庫を大量に抱えてしまうと、すぐに現金化ができない物品を大量に持つことになり、無駄な管理コストが発生することになります。
また、モノによっては消費期限切れや経年劣化を起こすモノもあるかもしれません。それらを処分するための費用がかかってしまうことも考えられます。反対に、管理コスト削減のため在庫を抱えないように仕入を控えると、顧客からの注文に対してすぐに応えられなくなり、機会損失に繋がってしまいます。
 このような問題が発生しないように、丁度いい量の在庫を維持し、必要な量を必要な時に供給して機会損失を防ぎ売上に繋げていくということが、製造業における在庫管理の目的なのです。

Ⅱ.在庫管理の課題

 「在庫管理の目的、あるべき姿は日々の業務から重々理解しているが、中々実現することができない」といった声もあるかと思います。近年では新型コロナウイルス等の影響もあり、予定通りに部品・部材が入ってこないという背景から在庫管理が適正に行えない状況もありましたが、社内の「管理」という部分に着目すると、下記のような課題がよく挙げられます。

●Excelによるアナログ管理
在庫管理をExcelで行っているため、リアルタイムに情報が更新されておらず、
正確な在庫情報の把握ができていない。

●管理方法が煩雑で特定の人にしか分からない
昔からのやり方で、在庫管理担当者しか分からないため属人化している。
担当者がいなくなると誰も分からないため、正確かどうかも判断できない。

●部門間の情報の連携不足
営業部門と製造部門で情報の共有ができておらず、営業は毎回製造部へ連絡して在庫状況を確認している。
製造部からも営業の受注予定が見えないため、生産計画や発注計画が立てられない。

 では、このような課題を解決するためにはどのような対応が必要になるのでしょうか。
何となくシステムを導入すれば解決すると思われがちですが、DX化が叫ばれている昨今、巷には「販売管理システム」「生産管理システム」「在庫管理システム」と様々なシステムが存在します。在庫管理をしたいから「在庫管理システム」を導入すればいいということではありません。
 製造業の在庫管理は様々な要素が絡み合っています。製品在庫だけではなく、材料・部品、仕掛品。既に使う予定が立っているモノを考慮して不足する数量はいくつなのか、単純にモノが少なくなってきたから買うというロジックでは最適な在庫管理の実現はできません。
 次項では生産管理システムを用いた在庫管理のメリットについて説明致します。

Ⅲ.生産管理システムを用いた在庫管理

 生産管理システムは、製造業における生産・販売・購買・在庫・原価に関する情報を一元管理する仕組みです。それぞれの機能が独立しているわけではなく、お互いに連携して情報を管理するため、Excel管理や単体の業務システムと比べて、よりリアルタイムな情報管理が可能となります。在庫管理は今ある在庫を把握するだけでなく、今後自社に入ってくる在庫、出ていく在庫も含めて把握する必要があります。製造業では上述の通り、製品だけでなく部品や材料、途中工程の仕掛品(半製品)も在庫管理の対象となり、特に仕掛品の管理は製造業特有といえるでしょう。
 そのため、「製品の受注がこれくらいあるから仕掛品を考慮して、この日までにいくつ作る計画を立てる必要がある」「その計画を実現するためにはどれだけの部品・材料が必要になる」といったように、連動して在庫を捉えていかなければなりません。
 受注・計画・発注・工程(仕掛)・入荷・出荷という全ての要素を一元管理し、未来の在庫推移を含めて管理できるというのが生産管理システムを用いた在庫管理のメリットとなります。
 今回の本題である「在庫の見える化」という点に着目すると、生産管理システムで日々の予実管理による在庫の入出庫を記録していくことで、未来の在庫推移も見えるようになってきます。「見える化」という点では実現できているといっていいでしょう。
 しかし、「見える化」はゴールではありません。見えたデータをいかにカイゼンへと繋げていくかという点が、更なるステップアップに向けて重要になってきます。

Ⅳ.”見える化”からカイゼンへ

  生産管理システムの運用で蓄積された在庫データは、いわばカイゼンに向けたヒントそのものです。過剰在庫を抱えていた期間はいつ?欠品が多発していたモノは?在庫を多く持つべきモノ、あまり持たなくていいモノってどれ?これらの答えはすべて、日々のオペレーションで蓄積された在庫データの中に含まれています。

 蓄積したデータの活用という面において、一般的な生産管理システムでは数値データで管理されていることがほとんどです。もちろん、数値データでも過去の分析や問題点の特定は可能ですが、直感的に把握したい場合や複雑なロジックを用いずに把握したいという場合には、在庫分析を行うクラウドサービス などを用いるのも有効です。
 例えば、自社在庫全体の在庫推移を視覚的に確認できたり、過去の入出庫の履歴をノコギリチャートで表示して過剰在庫期間・欠品期間を直観的に把握するような画面であったり、サービスごとに様々な分析が可能です。

 見える化で得た情報を活用し、どの在庫、期間に問題があるのかを特定し、カイゼンに向けた対策が打てる。ここまで出来てこそ、本当の意味で在庫が見えているといえるでしょう。


 弊社では生産管理システム「Factory‐ONE 電脳工場」の在庫データを用いて、在庫診断、在庫シミュレーションができるサービスをご提供しております。
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