製造業に求められる環境保全の取り組みとIT活用 2025.03.25
企業の社会的責任(CSR)が常に語られるようになった現在において、製造業に求められていることは、単に生産活動(ものづくり)を効率的に行うだけではありません。
大企業を中心に、カーボンニュートラルをはじめとした環境保全に対する取り組みが加速しており、今後は中小企業にも波及していくと考えられます。環境保全に対する取り組みは多岐にわたりますが、今回はものづくりに焦点を当て、製造業に求められる環境保全の取り組みとIT活用についてご紹介します。
Ⅰ.企業の環境問題に対する活動への関心の高まり
2015年にパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約締約国会議)において、2020年以降に温室効果ガス(GHG)を削減していくことなどを含む世界的な取り組みが採択され、2016年に発効されました。それ以降、環境問題への関心が世界中で高まり、日本では2020年10月に「2050年カーボンニュートラルの実現」を目指すことが宣言されました。
さらに近年では、2023年6月に国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が、国際基準のGHG(温室効果ガス)プロトコルで定められている下図のスコープにおいて、上場企業に対してはScope1、2に加えてサプライチェーン全体を対象としたScope3の排出量の開示を求める新たな基準を発表しました。
- Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
- Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
- Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
出典:環境省ホームページ
この発表を受け、日本国内では公益財団法人財務会計基準機構(FASF)傘下のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が、ISSB基準に相当する日本版基準の策定を行い、2025年3月5日に日本版のサステナビリティ開示基準を公表しました。Scope3では取引先の温室効果ガスの把握も必要になることから、今後は中小企業においても取引先からカーボンフットプリント(CFP)の開示要請が増加するものと考えられます。
また、消費者それぞれが社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援したりしながら消費活動を行う「エシカル消費」という行動も認知されつつあります。
これらのことから、取引先の満足度向上や消費者の購買意欲・安心感を維持するため、各企業が環境問題に取り組んでいる姿勢を表し、実際に行動することが重要な時代になったといえるのではないでしょうか。
Ⅱ.ものづくりに求められる環境保全の取り組み
製造業ではさまざまな業種・業態がありますが、ものづくりについては大きく以下の流れがあります。
この中で環境保全、とりわけ温室効果ガス削減のためには、以下のような取り組み例が求められています。
■設計/開発
ライフサイクル全体を考慮した環境に悪い影響を与えないような設計<環境適合設計>
■調達/外注
必要量以上の材料手配の抑制、環境に配慮した取引先を優先するグリーン調達
■製造
材料の無駄遣いによる廃棄の抑制や再利用の促進、過剰生産を抑えて生産工程で使用するエネルギーの削減
■販売(流通)
環境負荷の少ない包装材料等の利用や物流の効率化
その他、製造業に限った話ではありませんが、紙の削減(ペーパーレス化)も重要です。紙の大量生産のため、過剰な森林伐採が行われることで二酸化炭素を酸素に変える樹木が減少しているほか、紙の生産・廃棄の過程で二酸化炭素が排出されることから地球温暖化への影響が懸念されています。特に中堅・中小製造業の生産活動では、いまだ現場にさまざまな紙が存在し、ペーパーレス化は取り組みやすい施策といえるでしょう。
Ⅲ.IT活用による環境保全への影響
ものづくりにおける環境保全の取り組みにあたり、生産管理システムをはじめとしたITソリューションの活用は有効的です。生産管理システムは、ものづくりの業務プロセスを管理することで生産活動の効率化と、QCD*の最適化を図る仕組みです。生産管理システム内で、生産計画や在庫、製造工程などを正確に管理することで、過剰生産の抑制、無駄のない材料手配や歩留まりの改善などにアプローチすることができますので、調達や製造における環境対策につながります。 *Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)
また先述の通り、大手企業からカーボンフットプリントの開示要請が増加してくることから、従来の生産管理(QCDの最適化)に環境(Environment)も加えた、EQCDの管理をカバーすることが今後の生産管理システムに求められることになるかもしれません。
ペーパーレス化については、対象となる紙は「社内資料」と「対外資料」の大きく2種類に分けられます。製造業に当てはめると、社内資料は生産計画検討時の会議資料や製造現場の指示書、検査等の報告書、対外資料は仕入先への注文書や外注先への作業依頼書などが代表的な紙の資料になります。現場の指示書や報告書をペーパーレス化(電子化)する方法としては、タブレットを用いた改善がよく取り上げられます。これまで現場で記入した紙を事務所でシステム入力・保管していたところを、タブレットを用いて現場で入力することで、リアルタイムに正確な情報を管理することが可能です。対外資料のペーパーレス化はEDI(Electronic Data Interchange)が有効です。EDIは生産管理システムと連携し、企業間の商取引を電子的に行える仕組みで、紙の郵送やFAX、メールでのPDF送付でやり取りをしていた伝票をなくすだけではなく、シームレスな企業間取引を実現することが可能です。紙資料をペーパーレス化するメリットとしては、単に業務効率化に繋がる、環境対策になるという点だけでなく、これまで紙の情報でしか管理できなかったものを情報資産として未来の企業経営に活用することができるという点もあります。
まとめ
今後の製造業にとって、環境保全に関する取り組みは無視できない生き残り戦略の一つとなります。IT活用を業務効率化という視点だけでなく、企業価値向上に繋がる環境対策という視点でも検討してみてはいかがでしょうか。
弊社は1995年の設立から生産管理システム「Factory-ONE 電脳工場」のパッケージメーカーとして、長年にわたり製造業のIT活用を支援しております。また、国内外3000社を超える企業にご利用いただいているクラウドEDIサービス「EXtelligence EDIFAS」の提供もしており、ペーパーレス化の推進にも尽力しています。
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