工程管理の要、“実績収集”を効率化しよう! 2024.05.08


 製造業において、ものづくりを効率よく進行するためには工程管理が重要です。そして、工程管理を実施するにあたって、いかに精度の高い実績収集ができるかが大きなポイントとなります。今回は、工程管理の要、”実績収集”をいかに効率化できるか、ご説明していきたいと思います。

 

Ⅰ.そもそも工程管理とは?

 ものづくりにおいては、製品の「品質(Quality)」「コスト(Cost)」「納期(Delivery)」を最適化することが重要です。これらQCDのバランスを維持し、それぞれを向上させることで顧客満足度が上がり、利益の最大化に繋がります。そして、QCDを最適化するための生産に関わる業務全体のマネジメントを「生産管理」と呼びます。生産管理の範囲は非常に多岐にわたり、今回のテーマである工程管理も生産管理のひとつの要素になります。


生産管理システム選びの第一歩
「生産管理」とは、製品を効率的に生産するために必要不可欠な仕組みです。 生産管理の最大の目的は、製品の「品質(Quality)」「コスト(Cost)」「納期(Delivery)」を最適化することです... 続きを読む

 


 工程管理とは、生産計画を効率よく実行するために、進捗や実績、負荷などの生産工程全体を管理・統制することを意味します。工程管理の主な内容としては、「製造工程の策定」「工程計画の立案と負荷の調整」「工程の進捗管理」の3つです。

製造工程の策定
 どのような工程を経て製品を製造するかを策定します。また、工程に関わる部材や担当部署、設備、場所なども含めて明確化します。

工程計画の立案と負荷の調整
 生産計画数や受注数、納期に基づき、具体的な工程計画に落とし込みます。また、適切なキャパシティを設定したうえで、各部署や設備が過負荷にならないように、負荷の分散調整を実施します。

工程の進捗管理
 立案した工程計画に沿って納期通りに工程が進んでいるかを管理します。各工程では、工程計画に基づいて出された作業指示に従って作業を行い、着手と完了の実績を取ることで滞りなく工程が進捗しているかを把握します。

Ⅱ.なぜ工程管理が重要なのか

 生産管理の最大の目的であるQCD最適化を実現するうえで、ものづくりの根幹となる工程を適切に管理・統制することは非常に重要となります。工程管理がもたらすメリットは以下の通りです。

①納期遵守
 何をいくつ、いつまでに作れば良いかを明確にして指示を出せば、各工程で納期に間に合うように作業を進めることができます。また、進捗を管理することによって、納期遅れに繋がるアクシデントを素早く把握して、早急に納期調整や作業移管などの対処をすることが可能となります。

②品質維持
 日々の工程管理を通じて、製造工程の改善や標準化を図ることにより、一定の品質を維持して製造することが可能になります。品質が安定すれば歩留まり率の向上につながり、生産数も安定することになります。

③生産性向上
 どの工程にどれだけ人的資源や物的資源が投入され、どれだけのモノが製造できたかが把握できるので、製造工程の改善や資源の最適化が容易となります。少ない資源で多くの付加価値を生み出せるよう工程を改善できれば、製造原価の削減や生産性の向上に繋がります。

Ⅲ.工程管理の要は「実績収集」

 適切な工程管理を実施するためには、精度の高い実績収集が必要となります。実績収集とは、工程において誰が・何を・いくつ・どの部材を使って・どれくらいの時間をかけて作業したのか、などの実績データを収集することです。実績収集することによって進捗の把握はもちろんのこと、投入されたリソースや作業時間を把握でき、適切な工程管理が可能となります。裏を返せば、実績収集の精度が悪いと十分な工程管理が実現できません。

 実際、弊社でもお客様から「実績がうまく取れていない」「実績の精度が悪い」といった声をよくお聞きします。なぜ上手く実績収集できていないのか、お客様からよく伺う原因としては、主に以下が挙げられます。

実績収集のタイムラグ
 現場では、紙の作業報告書に記入し、事務所でまとめてシステムに入力しているため、実績収集にタイムラグが発生し、リアルタイムでの進捗や実績が把握できていない。粉塵や水が舞うような作業場など、PCを現場に置くことが環境的に難しいケースもある。

入力の手間
 管理したい情報の多さから、作業者が登録しないといけない情報も多くなり、入力に時間が掛かる。そのため、作業の合間ではPC入力することが不可能。

製造工程策定の不備
 製造工程を適切に策定できていない。例えば、工程を必要以上に細かく分けており、実績収集に手間がかかってしまう。

実績収集の運用が定着しない
 現場の作業者が面倒くさがって協力を得られない。実績収集する目的を現場に浸透させ、実績登録を文化や習慣として定着させられていない。

Ⅳ.効率的な実績収集方法

 工程管理を実現する上で精度の高い実績を収集することは重要ですが、作業者の手間を増やしてしまうと本末転倒です。そのため、手間のかからない効率的な方法を選ぶ必要があります。実績収集を効率化する手段として主に以下の方法が考えられます。

ハンディターミナル
 ハンディターミナルとは、バーコードの読み取り等が可能な片手で持てるサイズのデータ収集端末です。作業指示書のバーコードを読み取り、作業者や作業時間など、最低限の情報を入力するだけで作業実績が登録できます。また、防塵・防水など、多様な環境に対応したものも多くあるので、PCの置けない作業場でも利用できます。

タブレット
 一般的なタブレット端末を利用した実績収集も挙げられます。ハンディターミナルと同じく、作業指示書のバーコードを読み取り、最低限の情報入力だけで実績を登録することができます。ハンディターミナルと比べて耐久性や防塵・防水性能は下がりますが、比較的安価で導入できます。また、作業報告書などの紙帳票をそのままのレイアウトでデジタル化できるツールもあり、紙帳票の記入と同じように直感的にタブレットに入力することが可能です。

RFID
 RFID(Radio Frequency Identification)とは、電磁波を用いて無線でデータの読み取りを行い、モノの識別や管理を行うシステムのことです。 RFIDツールを活用した実績収集では、作業者がRFIDカード(指示書)を読み取り装置に置くと作業開始、離すと作業完了というような非常に簡単な操作で実績収集ができます。

IoT
 人手を介さない実績収集の方法です。生産設備や装置にIot機器を設置することで、センサーやAIカメラなどで工程の進捗状況を把握して実績収集ができます。また、実績だけでなく、例えば振動や傾き、音、温度、光などをデータとしてモニタリングできる状態になるので、品質管理や異常検知の面でも人手を省くことができます。また、取得した情報を活用することで、トラブルが起こる前にラインを自動停止するなど、設備の自動制御も可能になります。

 

まとめ

 今回は、ものづくりにおける工程管理、実績収集の重要性についてご説明しました。実績収集を効率化できる手段もいくつかご紹介しましたが、実績収集の目的を現場に浸透させ、習慣として定着させることができないと、システムやツールの持ち腐れになります。したがって、手段以上に現場への目的共有や意識づけが重要といえるでしょう。
 工程管理は、在庫管理や原価管理にも繋がる重要な要素となるので、今一度自社の工程管理を見直してみてはいかがでしょうか?


 弊社では生産管理システム「Factory‐ONE 電脳工場」をはじめ、サービスライブラリー「EXfeel」にて工程管理システム・実績収集ツールを取り扱っています。生産管理や工程管理の効率化をご検討のお客様はお気軽にご相談ください。