労務の知識<1> 産後パパ育休
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、私は英語を教えるだけでなく、国家資格キャリアコンサルタントと社会保険労務士の資格を持ち、大学生や社会人のキャリア支援などを行っています。昨年から英語でのキャリアカウンセリングも請け負っていますが、ここ最近、新卒採用について、英語での面接や録画面接を実施している企業が若干増えてきたように感じます。また、外国人の新卒採用も、日本語についてビジネスレベルでなくても採用する企業が、職種によってですが増えてきたように感じます。皆様の会社でも、外国人の採用やグローバル展開のために英語や他言語が話せる人材を雇用される機会があるのではないでしょうか。
2019年のコラムで、「英語面接を受ける」、「英文履歴書の書き方・見方」、2017年のコラムで「日本の雇用事情や外国人雇用」について書かせて頂き、採用や人事・総務に関わる英語をご紹介しましたが、今回は、「(昨年度改正された)育児・介護休業法」についてお伝えします。外国人社員の方も、育児休業を取得される場合があるかもしれませんので、就業規則の改正、また英語版の就業規則の改正も必要です。少しでもお役に立てればと思います。
まず、育児休業取得率についてですが、厚生労働省が実施している「令和3年度雇用均等基本調査」の結果によると男性の育児休業取得率は13.97%と、令和2年度の調査からは上昇しているものの、女性の取得率85.1%から見るとまだまだ低い状況です。今後、男性の育児休業取得者も増えてくると思われますので、その点を踏まえて、会話形式でお伝えしていきます。
Male Employee<以下、M>:We’re expecting the baby to arrive soon.
(もうすぐ、赤ちゃんが産まれるんですよ。)
Human Resources<以下、H>:Oh, really? Congratulations! When is the baby due?
(そうなのですね。おめでとうございます!いつ予定日ですか?)
M:At the end of October.(10月末の予定です。)
H:Oh, that’s very soon. You must be looking forward to it.
Oh, by the way, did you know the Child Care and Family Care Leave Act has been modified so that fathers can take
child care leave easily?
(もう直ぐですね。楽しみですね。
そういえば、昨年、育児・介護休業法が改正されて、父親が育休を取りやすくなったことをご存知ですか?)
M:Oh, really? I didn’t know that. Could you tell me a little bit more?
(知らなかったです!もう少し詳しく説明していただけませんか。)
H:Of course! “Child Care Leave at birth for fathers” has been newly established.
This system enables fathers take child care leave flexibly right after the birth of their child.
Fathers can take up to 4 weeks within 8 weeks after the birth of their child. It is also possible to take the leave in two
installments.
Besides, we have a labor-management agreement, so employees can also work shorter hours during the "Child Care
Leave at birth for fathers" if there is an agreement with the employee.
In addition, it is now possible for both parents to take the existing childcare leave in two installments until the child
reaches 1 year of age.
(もちろんです。「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設されたのですよ。
お子さんが生まれた直後の時期に柔軟に育児休業が取得できるようにできた制度です。
出生後8週間以内に4週間まで2回に分割して取得できるようになります。
また、当社では労使協定がありますので、従業員との合意があれば、「産後パパ育休中」に一時就業すること
もできます。
更に、従来の1歳までの育児休業も2回に分割して取得可になりました。これは夫婦ともに可能です。)
M:I see. Thank you very much for your information.
I believe that this system is a good system because fathers can take child care leave flexibly.
But I am really concerned that my salary will be reduced if I take child care leave.
(そうなのですね。情報をありがとうございます。柔軟に育児休業が取れるのは、とても良いですね。
ただ育児休業を取ると、給料が減ってしまうことが気になります。)
H:While taking childcare leave, childcare leave benefits will be provided and social insurance premiums will be waived.
As a result, the take-home pay will be approximately 80% of what it was before the leave.
(育児休業を取っている間は、育児休業給付が支給されますし、社会保険料が免除となります。
従って、手取りの収入は休業前の約8割程度になります。)
M:Oh, I see.
I would like to consider taking childcare leave to support my wife's postpartum period.
I will discuss this with my boss, too! Thank you very much.
(そうなのですね。妻の産後を支えるためにも育児休業の取得を考えたいと思います。
部門長にも相談してみます。ありがとうございました。)
H:Please do that.
(ぜひ、そうしてください。)
*育児休業は、有期雇用労働契約の場合など、取得要件が企業ごとに取り扱いが異なる場合がありますので、
必ず所属されている企業にご確認ください。
<参考>
・ 育児・介護休業法の改正ポイントがまとめられているサイト(厚生労働省)
・ 雇用管理に役立つ多言語用語集(厚生労働省)
・「産後パパ育休(出生時育児休業)」に関係する英単語
1.Child Care and Family Care Act/育児介護休業法
*厚生労働省のページでは、「Act on Childcare Leave/Caregiver Leave」と訳されている場合もあります。
2.Child Care Leave at birth for fathers/産後パパ育休(出生時育児休業)
*新たな制度ですので、まだ決まった英訳が無いようです。
1歳までの育児休業と区別した方が分かりやすいので、今回は上記のように英訳しています。
3.labor-management agreement/労使協定
4.child care leave (maternity leave/paternity leave/parental leave)/育児休業
*従来の育児休業については、産後パパ育休(出生時育児休業)と異なる表現の方が分かりやすいと思います。
また、2017年のコラムでは、育児休業をmaternity leaveと紹介しておりましたが、これは主に母親の場合に使います。
父親の場合には、paternity leaveを使います。
男女とも育児休業が取得できますので、child care leaveやparental leaveの方が性別関係なく表現できます。
5.childcare leave benefits/育児休業給付
6.social insurance premiums/社会保険料
7.take-home pay/手取りの収入
8.postpartum/産後、産後の
その他、出産に関連する表現も紹介します。
9.maternity allowance/出産手当金
10.lump-sum allowance for childbirth/出産育児一時金
いかがでしたでしょうか。育児休業だけでなく、従業員の方々のライフスタイルに合わせて休暇が取れる仕組みが作れると良いですね。就業規則の英訳などが必要でしたら、ぜひ、お声掛けください。
関西Actualizers(アクチュアライザーズ) プロフィール
2015年4月設立。経験を通じて、「海外留学や海外生活を考えている人たちの背中を押したい」と考える関西のグループです。 海外生活をする、外国人を迎え入れることにあたって知っておくと良い事や役立つ情報などを発信しています。
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